千粒の涙
■第1章 残酷な巡り合わせ
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 始まりは、京都の町を訪れたことにあった。旅をするには、最高の季節。時は春。二才下の妹とふたりお揃いのワンピースに身を包み、私にとっては生まれて初めての長旅、プラス、初めて訪れるその地に心弾んだのは言うまでもない。
 当時、十二歳だった私。
 どこか知らない町へ行き、そこで作られる思い出の記憶を残すのにはちょうど良い年齢に達していたかもしれない。
 今回の旅の目的は、祖母の妹家族に会いに行くこと。
 そこは、私の住んでいる町から、単線の汽車に揺られて二時間。それから、船に乗り換えて一時間。そこから、電車に揺られて四十分。さらに、新幹線に乗り換えて、一時間半。そして、まだもう一度、乗り換えて、一時間弱。そこで、ようやく、改札口を出て、徒歩約三分の所に祖母の妹の住む家があるのだという。だから、私達三人がどんなにその道のりを急いで朝から行ったところで、祖母の妹家族が住んでいる家に到着した時刻は、子供の時間でいえば『おやつタイム』を少し過ぎた、午後三時を少し回っていた。
 「こんにちは。やれやれ、やっと、着いたよ。」
 祖母が、玄関先で挨拶をすると、
 「よう、来たね。早う上がり。」
 祖母の妹は、笑顔で私達三人を迎えてくれた。
 祖母は手みやげを渡しながら、
 「智くんは、どうした?この子達に、一度、会わせてやろうと思うて、ついでがあったさかいに、連れてきたんや。」

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